兵庫県立美術館開館20周年 関西の80年代

1980年代の現代美術においては、先行する70年代の禁欲的な傾向から一転して、豊かな造形表現が花開きました。物語性や具体的なイメージが復活し、展示空間全体を作品化するインスタレーションの多彩な展開、過去の文脈からの自在な引用など、現在につながる様々な表現語彙が編み出されています。関西では、若手作家のみずみずしい作品群が一気に登場して勢いを示し、「関西ニューウェーブ」や現代美術は「西高東低」との言い方も登場しました。
当時、作家たちは京阪神各地の画廊などで個展やグループ展を精力的に開催し、関西という限られた地域であっても実に多様な動きがありました。その舞台のひとつに「アート・ナウ」も挙げられます。1973年に梅田近代美術館(大阪)で開催された「アサヒ=アート・ナウ」を引継ぎ、1975年からは当館の前身である兵庫県立近代美術館で開かれていた、関西の現代美術を紹介するシリーズ展です。80年代にはより若い作家に重点が置かれて登竜門としての性格を強め、仕切りをとりはらった展示室には競い合うように大作が並びました。
兵庫県立近代美術館を受け継ぎ、兵庫県立美術館が開館して20周年の節目に開かれる本展では、「アート・ナウ」の出品者や出品作品を軸とする36作家の約50点により、80年代関西における新たな動向の一断面を示し、その今日的な意味を考えます。