すべて未知の世界へ ― GUTAI 分化と統合(統合:国立国際美術館)

具体美術協会(具体)は、1954年、兵庫県の芦屋で結成された美術家集団です。画家の吉原治良(1905-72)を中核に据えたこの集団は、絵画をはじめとする多様な造形実践をとおして、「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示」しようとしました。吉原による指導のもと、会員たちがそれぞれの独創を模索した18年の軌跡は、いまや国内外で大きな注目を集め、戦後日本美術のひとつの原点として、なかば神話化されるに至っています。
本展覧会は、そんな具体の歩みを、「分化」と「統合」という二つの視点からとらえなおす試みです。誰の真似にも陥らず、互いに異質であろうとしながら、あくまで一個の集団としてまとまろうとするその姿勢は、吉原の考える美術のあるべき姿、つまり「人間精神と物質とが対立したまま、握手」している状態とも、重なりあうものだと言えるでしょう。
大阪中之島美術館と国立国際美術館、二会場によって構成される本展覧会は、具体の活動拠点である「グタイピナコテカ」が建設された地、大阪の中之島で開催される初の大規模な具体展です。大阪中之島美術館で具体を「分化」させ、それぞれの独創の内実に迫りつつ、国立国際美術館では具体を「統合」し、集団全体の、うねりを伴う模索の軌跡を追う。それによって目指すのは、新しい具体の姿を提示することにほかなりません。解散後50年となる2022年、「すべて未知の世界へ」と突き進んでいった彼ら/彼女らのあゆみをご覧ください。

統合|国立国際美術館
具体は、少なくともその出発点においては、「画家」集団でした。時代が下るにつれ多様化していく造形実践の数々も、もとをたどれば、絵画という規範からの自由をめざした結果と言えます。問題は、絵画らしさをいかに解体し再構築したか、です。絵画「らしさ」をどう捉えているのか、また、それを解体してなお絵を描こうとするのか否かで、導き出される新しさはおのずと変わってくるでしょう。国立国際美術館では、マクロな視点に立って具体のあゆみを眺め、さまざまに展開される問いなおしの作業に、いくつかの傾向を見出そうと試みます。必ずしも一枚岩でないこの集団の、内なる差異をあぶりだし、そのうえで「統合」してみせることが主な目的です。

アーティスト
今井 祝雄 今中 クミ子 上前 智祐 浮田 要三 大原 紀美子 小野田 實 金山 明 菅野 聖子 聴濤 襄治 喜谷 繁暉 木梨アイネ 坂本 昌也 嶋本 昭三 白髪 一雄 白髪 富士子 鷲見 康夫 田井 智 高﨑 元尚 田中 敦子 田中 竜児 坪内晃幸 猶原 通正 名坂 千吉郎 名坂 有子 堀尾 昭子 堀尾 貞治 前川 強 正延 正俊 松田 豐 松谷 武判 向井 修二 村上 三郎 元永 定正 森内 敬子 山崎 つる子 ヨシダミノル 吉田 稔郎 吉原 通雄 吉原 治良
主催
⼤阪中之島美術館、国⽴国際美術館、朝⽇新聞社、MBSテレビ
協賛
竹中工務店
協力
公益財団法人 ダイキン工業現代美術振興財団
助成
令和4年度文化庁優れた現代美術の国際発信促進事業、公益財団法人 花王芸術・科学財団、一般財団法人 安藤忠雄文化財団
特別協力
芦屋市立美術博物館、兵庫県立美術館
会場
国⽴国際美術館
公式サイト
すべて未知の世界へ ― GUTAI 分化と統合

撮影 : 福永一夫