生き続けるもの
瑞雲庵は、過去〜現在〜未来まで、人の営みを繰り返しながら空間が生き続け、常に変容することによって、その美しさを生み出してきた。その様子は、人や自然が作り出した作品のようにも思える。今もなお、美しく生き続ける瑞雲庵にて開催する今回の展覧会では、素材と人の手を経由することに意味があり、それでいて面白い。そんな作品を作るアーティスト達を紹介したいと思う。
築山は、木、金属、絵の具など常にさまざまな素材を用い、その都度素材と対話をする形で制作を続けてきた。彼の作品からは、身の回りにあるあらゆる物の見方をほんの少し変えるだけで面白い発見があるということを教えてくれる。
北浦は、ユーモラスで少しニヒルな木彫り作品を発表してきた。どこか子供心をくすぐられる作品には木の温もりが欠かせない。木だけでなく、トーテムポールの様に組み合わされた様々なモチーフ達も彼にとっては素材の一つなのである。
鈴木は、自ら染めて作った糸を綴れ織という技法を用いて平面作品を制作。一本一本に込められた手の触感が美しい作品を彩る。手作業の痕跡が蓄積し、構成されているため、作品が経てきた時間や記憶が感じ取れるだろう。
森本は、動物のお尻や足など、ある部分に着目した陶芸作品を製作している。手によってコントロールできる造形の領域と、一度窯に入れると自然に作品を委ねることしかできない領域を横断する技法は美しい作品を生み出す。
辻は、これまで映像作家でありながらデジタルではなくアナログのアプローチを重要視したインスタレーションを展開してきた。映像という素材を人の力でどのように変容させることができるかをテーマとしている。
彼らの作品のプロセスと、瑞雲庵が今日に至るまでのプロセスに共通項を見出し、自然と人間が生み出す面白さ、そしてその先の未来を作品と空間を通じて体感してほしい。


