Liquidity

京都市北区の上賀茂エリアに位置する瑞雲庵を舞台に、国内外で精力的に活動する現代美術家5名による展覧会「Liq uidity」を開催し ます。本展の会湯となる瑞雲庵は築百年を数える古民家であり、上賀茂地区の歴史と雰囲気を色濃く伝える建物です。この歴史的な建物の特徴に、各作家の多彩な作品を呼応させながら、伝統と革新が融和した新たな価値観の創出を試みます。 展覧会を構成するのは、絵画、写真、インスタレーション、サウンドを含む多様なメディアの作品です。各参加作家は、これらのメディア を自由に、横断的に組み合わせて独自の美術表現を追求しています。そこに浮かび上がる各作家の色/個性の多彩さは、まさに多様化 する現代美術の様相を象徴するものと言えます。そのような各作家の色/個性を全面に出しつつも、展覧会名である「Liquidity(液体、 流動性)」のように混ぜ合わせることによって、新たな色/価値を生み出すことが本展の目的です。この機会に是非お楽しみください。​

「Liquidity」

今、美術を含むあらゆる領域の価値観が根本的に見直されています。
昨今の新型コロナウイルスの蔓延は、デジタル技術への依存を一層深めるとともに、マスクの着用や「ソーシャル・ディスタンス」を含む「新しい生活様式」への強制的な移行をもたらしました。その影響は、我々の思考や感覚、コミュニケーションの方法など、あらゆる面に影響を及ぼしています。そのなかで、社会を構成するあらゆる人々の多様性がこれまで以上に顕在化し、それまで支配的であった二項対立的な枠組み ー オフラインとオンライン /組織と個人 / 肉体と感覚 ー が有していたリアリティも失われつつあるように感じられます。
あらゆる価値は、もはや単一の尺度や視点によって測ることができなくなっているのではないか。すべては「多様性」という特徴を残しながらも、「液体(liquid)」のように融け合い、混ざり合っていくのではないか。

「Liquidity」展の構想は、このような感覚のもとで始まりました。
本展を構成するのは、この問題意識を同時代的に共有する5名の現代美術家です。各作家は、それぞれに異なる手法、メディウム、ストーリー、方法論、価値観をもって、独自の美術表現を追求してきました。それはまさに、現代美術の多様性を物語るものです。本展では、個々の作家、作品の特徴を際立たせながらも、瑞雲庵という築百年を超える建物の空間性と時間性との呼応のなかで、「液体(liquid)」のように互いが有機的に混ざり合うような展示風景を立ち上げることを試みました。
そこに浮かび上がる風景には、中立的かつ無時間的なホワイトキューブでは生み出されない、新たな社会を生きる原動力が創出されると信じています。

山田隆行(キュレーター)

アーティスト
キオ・グリフィス 田中 秀和 西村 雄介 八木 良太 水木 塁
企画
山田隆行
助成
公益財団法人西枝財団、京都市「Arts Aid KYOTO」補助事業
技術協力
YOKOITO Additive Manufacturing
会場
瑞雲庵
公式サイト
助成展覧会 2023春

写真 : 多田 雅輝