フェムケ・ヘレフラーフェン「Corrupted Air|腐敗した空気」

フェムケ・ヘレフラーフェン(1982年ナイメーヘン(オランダ)生まれ、アムステルダム在住)は、現代の金融技術やインフラに関する抽象的なデータから、それらが持つ意味や生態学的影響などについて検証し、ジャンル横断的で多様な表現方法を用いて独自のイメージを生み出す気鋭のアーティストです。本展は、国際的に高く評価された《Corrupted Air—Act VI(腐敗した空気——第6幕)》(2019)を中心に、彼女の活動を日本で初めて紹介する貴重な機会となります。同作品は、大災害に投機する金融商品であるカタストロフィ・ボンド*についての調査研究から過去の生態系の大惨事を証言し、すでに絶滅してしまった生物のデジタルモデルの3体が、人間によって引き起こされようとしている「6度目の大絶滅」について議論するという演劇的なインスタレーションです。パンデミック以前に作られた作品ではありますが、目に見えない空気中のウイルスに怯えながら日々を過ごす「コロナ禍」を経験し、未だその呪縛から解放されていない私たちにとって、この「Corrupted Air(腐敗した空気)」というタイトルは、さらなる問いを投げかけているかのように感じられます。また、バッテリー素材のリチウムの高騰を出発点として、技術産業の原材料、金融投機、エネルギーにまつわる幅広い問題を探求するアーティスト・ラン・プロジェクト「On-Trade-Off」の一環で制作された《A Prelude to: When The Dust Unsettles(予兆:さめやらぬほとぼり)》(2022–23)や、現在進行中のプロジェクトの構想資料などもあわせて紹介します。

* カタストロフィ・ボンド(大災害債券/CATボンド)

CAT(Catastrophe=カタストロフィの略)ボンドは、一般に同程度の格付けの発行会社が発行する普通社債よりも高い利率が支払われる代わりに、自然災害(台風・洪水・地震など)が発生した場合には、投資家の償還元本が減少する仕組みの債券のこと。

(参考文献:野村証券 証券用語解説集 https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ki/cat_bond.html(最終閲覧日:2022年11月28日))

アーティスト
フェムケ・ヘレフラーフェン
企画
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
主催
京都市立芸術大学
助成
公益財団法人 花王芸術・科学財団、芸術文化振興基金
後援
オランダ王国大使館
会場
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
公式サイト
フェムケ・ヘレフラーフェン「Corrupted Air|腐敗した空気」

撮影 : 来田猛

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