滋賀県立美術館開館40周年記念 つくる冒険 日本のアール・ブリュット45人 ―たとえば、「も」を何百回と書く。

 日本語では、「生(なま)の芸術」と訳されてきたアール・ブリュット。1940年代、フランスの画家、ジャン・デュビュッフェが、精神障害者や独学のつくり手などの作品に心を打たれ、提唱した美術の概念です。本展では、2023年に日本財団より受贈した、45人の日本のアール・ブリュットのつくり手による作品約450点を展示します。
 たとえば、「も」を何百回と書いたり、他人には読めない文字で毎日同じ内容の日記を記したり、寝る間を惜しんで記号を描き続けたり―冴えたひらめきや、ひたむきなこだわりを形にするため、出どころの謎めいた発想と熱量をもって挑む、そんな冒険的な創作との出会いをお楽しみください。

45人の作品が滋賀県立美術館に収蔵されるまで
 2010年、フランス・パリのアル・サン・ピエール美術館で「アール・ブリュット・ジャポネ(邦訳:日本のアール・ブリュット)」展が開催されました。この展覧会では、滋賀を含む全国各地でその才能を見出された障害のある人や独学のつくり手たちの作品が日本のアール・ブリュットとして紹介され、話題を呼びました。さらに、会期後日本に戻ってきた作品群による巡回展が国内各地で開催され、逆輸入的に日本でもアール・ブリュットが注目を集めるきっかけとなりました。
 本展に出品される45人の作品は、「アール・ブリュット・ジャポネ」展に出展された後、日本財団により所蔵されていたのもので、2023年、さらなる活用を目的に、アール・ブリュットを収集方針に掲げる国内唯一の公立美術館である当館に寄贈(寄託を含む)いただきました。これにより、当館は世界でも有数のアール・ブリュット作品のコレクション(731件)を有する美術館となりました。