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島村逢紅

和歌山市の酒造業などを営む家に生まれた。本名・安三郎。和歌山中学時代から美術雑誌『みづゑ』に投稿して日本水彩画会会友になるが、美術学校進学は家業を継ぐため断念。絵画とほぼ同時期に始めた写真が、島村の生涯にわたる表現活動となった。
1912年には、和歌山市にて「木国写友会」を結成。1930年代には、福原信三が設立した「日本写真会」の同人となり、1939年に資生堂ギャラリーで初めての個展を開催する。芸術写真から新興写真へと移り変わる時代において、島村は独自の漆黒と階調表現により、福原信三の弟で同時代に活躍した写真家、福原路草と対比して「路草の白、逢紅の黒」と高く評された。
島村は慶應義塾に進学していた1913年に、彫刻家荻原守衛の遺作を集めた碌山館を撮影しているが、同時期に保田龍門も同館を訪ねていたことから親交を深め、島村家は保田のパリ留学を支援した。1927年には、第4回選抜中等学校野球大会で和歌山中学が優勝したことに伴う米国旅行に同行し、各地の県人会に迎えられた。この機会に島村は同地の写真家たちと交流した可能性も考えられる。

島村逢紅《[後ろ姿]》 :
1927年 ゼラチン・シルバー・プリント 個人蔵